そのことを体現しているのは、漫画家の堀田あきおさん(60)、かよさん(54)夫妻だ。あきおさん35歳、かよさん29歳で結婚。直後、かよさんに子宮内膜症が見つかり、治療を受けながら「早めに子どもをつくろう」と決意。あきおさんが、かよさんの検査や入院に同伴する生活が始まった。あきおさんは、精子が熱に弱いと聞くと、下半身だけ外に出して湯船につかり、漢方薬も一緒に飲んだ。

「僕は産めないけど、気持ちだけはずっと寄り添っていました」(あきおさん)

 かよさんは一度、妊娠したが流産。様々な病院を転々とした末に、治療をやめた。当時38歳。一緒にがんばってきたから、これからは2人で仲良く生きていけるという確信があった。だが、本当のきっかけは事務的かつ高圧的な医師の態度に耐えられなくなったことだ。指定された日に診察を受けると、

「今日はなんで来たんですか? 体温が上がってからではやることがないので、次は生理が終わったら来てください」

 冷たい言葉に、気持ちがぷつりと切れたという。

「医師に傷つけられる人は多い。患者の気持ちを理解する医師が増えてほしい」

 と、かよさん。不妊治療の継続に悩む人たちにエールを送る。

「不妊治療は何度でも再開できるし、やめることもできる。続けた後悔も、やめた後悔も納得も、人生に深みを与えてくれます」

(編集部・古田真梨子)

AERA 2016年8月8日号

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