●想像を絶する臭さ
一般的とは言い難いが、購入できる変わり種の極致といえば、スウェーデンなどで食されるシュールストレミングだろう。想像を絶するという世界一の臭さは、どうやってできるのか。
「ニシンを薄い塩で発酵させて、缶詰の中で空気に触れさせない嫌気的発酵を進めると、発酵菌が異常代謝をするんですね。それがあの猛烈な匂いを生み出す。魚をよく食べていたバイキングが、偶然見つけた保存方法でしょうね」(同)
さらに究極は、冒険家の故植村直己さんが愛好したというキビヤックか。アパリアスという海鳥を何十羽も、内臓と肉を取り除いたアザラシの中に詰め込んで縫い閉じ、数カ月から数年も放置して熟成させたもの。匂いも強烈だが、極寒の極北で、貴重なビタミン源としてイヌイットの生活を支えてきた発酵食品だ。
アジア地域に目を向けると、最近では日本でも製造、販売されているテンペがちょっとしたブームになりつつある。大豆が原料で見た目は納豆によく似ているが、納豆菌ではなくクモノスカビの一種であるテンペ菌を用いた発酵食品。全くの別物で、糸も引かないし、加熱して調理する食材だ。
ここで、日本を代表する発酵食品、納豆を考えてみよう。納豆菌は枯草菌の一種で稲わらに多く生息しており、蒸した大豆を稲わらで包んで約40度で保温し、1日ほどかけ発酵させて作られる。日本ナットウキナーゼ協会によれば、納豆はタンパク質やビタミン類が豊富なだけでなく、血栓予防効果や抗菌作用など健康食品としても優れているという。
では、味噌や日本酒のように納豆は日本にしかないのかといえば、実はアジアでは広く食されている。
「中国にもミャンマーにもカンボジアにもベトナムにも、とてもおいしい納豆がある。大豆を作り、コメを食べる文化があり、稲わらが豊富にあるからです。ただし、食べ方が全然違う。炒めたりスープに入れるなど、必ず加熱します。幸い納豆菌は熱に強いので問題ありませんが、とにかく生で食べるのは日本だけです」(同)