「慰霊の日」の朝、戦争犠牲者の名前が刻まれた「平和の礎」の前に座り込んで手を合わせる人たち。今年は新たに84人の名が加えられ、刻銘者は24万1414人になった/6月23日、沖縄県糸満市 (c)朝日新聞社
「慰霊の日」の朝、戦争犠牲者の名前が刻まれた「平和の礎」の前に座り込んで手を合わせる人たち。今年は新たに84人の名が加えられ、刻銘者は24万1414人になった/6月23日、沖縄県糸満市 (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

「海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理縮小、新辺野古基地建設阻止に取り組んでいく不退転の決意を表明する」

 沖縄県の翁長雄志知事は6月19日の県民大会でこうあいさつ。公式の場で米海兵隊撤退に初めて言及した。

 今回の県民大会は、翁長知事を支える社民や共産などの県政与党や企業関係者らでつくるグループが主催。自民、公明などは「海兵隊撤退」を盛り込んだ大会決議案などに反発し、参加を見送った。このため、3米兵による少女暴行事件に抗議した1995年の県民大会のような「超党派」の体制は築けなかった。一方で、主催者の政治スタンスが拡散しなかったことで、思い切った決議採択につながったとも言える。

 そこで注目されるのが、翁長知事の今後だ。これまでの知事の公約には、名護市辺野古の「新基地建設阻止」はあっても、海兵隊撤退までは求めていなかった。「全基地撤去よりは弱いが、知事の公約を超える」(県幹部)この新要求を、知事はどう扱うのか。

●海兵隊撤退は民意集約

 翁長知事は大会終了後、「海兵隊撤退の中には(中略)県民がそれぞれ持っているものが集約されている」と記者団に説明した。海兵隊撤退要求は、海兵隊が使用する普天間飛行場の代替施設となる辺野古基地建設の阻止だけでなく、自民党が掲げる「米軍基地の整理縮小」や、公明党沖縄県本部が主張する普天間飛行場の「県外・国外移設」要求とも矛盾しない。したがって、県民の総意を包含する、との認識だ。

 沖縄県議会が5月、「在沖米海兵隊の撤退」を求める初の決議を採択したことが、翁長知事のスタンスを「海兵隊撤退」に踏み切らせるきっかけになる、と本誌6月20日号で予測していた沖縄の政治アナリスト、比嘉良彦氏はこう解説する。

「県民大会に自民・公明が参加しないことを最も気にかけていたのは知事です。しかし、自公不参加でも大会の成功を確信し、自信をもって『海兵隊撤退』に言及できる、と判断したのです」

著者プロフィールを見る
渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

渡辺豪の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう
次のページ