その意味で、慶應義塾大学の片山善博教授も「組織管理能力」を重視する。

「自治体はチームプレーで成り立っていて、知事は監督です。監督だけが目立ってもダメ。職員の能力をどれだけ引き出せるかが大切です」

 元総務相で鳥取県知事を務めたこともある片山教授は、この点では東京も地方の自治体も同じだと感じている。そのうえで都知事ならではの素養について、

「対外的な露出度が非常に高いポジション。見た目の印象も大切ですし、まさに首都の“顔”になれることが重要です」

●海外出張は当然のこと

 舛添氏が「贅沢(ぜいたく)」と批判を受け、辞任の引き金にもなった海外出張。確かに、9回の出張で2億円を超える経費は高額すぎるが、韓国では朴槿恵(パククネ)大統領と会談。安倍晋三首相の「日韓関係を改善したい」というメッセージを伝えている。こうした役割は、他の自治体の首長ではなしえない。「世界の中心都市TOKYO」をアピールするために、都知事だけに課された役割だ。欧州視察では、パリ市長やロンドン市長らとも会談している。

 前出の青山氏も、こう話す。

「都知事は、非常にグローバルな存在でもある。もちろん贅沢はいけませんが、海外出張は当然のことです。都知事は内向きではダメ。国際感覚が必要です」

 その国際的な見識が問われる大きな舞台が、4年後に迫る東京オリンピック・パラリンピックだろう。都知事は、国のトップである首相と並んで、国籍や人種の壁を超えて世界にメッセージを発信する「チャンス」を手にすることになる。

 しかし、やはり気になるのはお金のことだ。政治とカネの問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授は、

「首都であっても、一自治体。予算が大きいことにだまされてしまうと、違法行為をチェックできない。原点を忘れているから、たがが緩む。東京五輪についても、アピールは必要だが、設備投資は、五輪後をきちんと見据えたものであるべきです」

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