日本人が海外旅行をする際の定番観光スポットとも言える美術館。日本語のガイドブックは大きなものから小さなものまで、その土地の美術館をフォローしている。外国人にとっても、日本の美術館は魅力的ですか?
フランス人美術史家のソフィー・リチャードさんは言う。
「美術館というのは、伝統的なものから現代的なものまで、古い文化、新しい文化を語ってくれるゲートウェイのようなものです。日本にも、小さいけれど、日本文化を楽しめるおもしろい美術館が無数にある。多すぎて選べないくらいです」
でも、小さなおもしろい美術館ほど、英語対応や宣伝などが遅れていることが多く、外国人には存在さえ知られていない。そこでソフィーさんは2014年、英語で書かれた日本の美術館のガイドブック『The art lover’s guide to Japanese museums』を出版。今年4月には、日本語版『フランス人がときめいた日本の美術館』(集英社インターナショナル)を発売した。
美術館ガイドを書くきっかけは、東京都渋谷区の「旧朝倉家住宅」という、大正ロマンの香りが残る建物を見学したこと。東京府議会や渋谷区議会で議長を務めた故・朝倉虎治郎が、大正8年に建てた歴史的建造物として知られる。
「代官山を歩いているときにたまたまうっそうと茂った木々を見つけ、ひと休みしようと足を踏み入れると、奥に古い建物があって公開されていた。誰もいない静かな空間で、畳と檜(ひのき)の香りを感じながら、特別な時間を過ごしました」
その時の感動を友人たちと共有したい。そんな思いから、これまであまりなかった日本に特化した美術館の紹介本を書き始めたという。本では、10年の歳月をかけて自らの目で確かめた約60の美術館を紹介した。読者からの反響が大きかったのは、東京・上野の東京国立博物館内にある「法隆寺宝物館」や瀬戸内海の島々に展開する「ベネッセアートサイト直島」などだ。
「特に、アートを通して美しい自然に出会えるベネッセアートサイト直島は反響が大きかった」
とソフィーさん。首都圏なら東京都小金井市の「江戸東京たてもの園」や、戦前の建築と美術が調和する品川区の「原美術館」、そして前出の「旧朝倉家住宅」もおすすめだ。