
■ドイツの今後も焦点
池上:NATOやEU(欧州連合)は共同歩調が乱れてバラバラになってしまう可能性が高くなるということでしょうか。
トッド:今すぐにそうなるというわけではありませんが、米国や英国、ポーランドなどの好戦的な態度が、NATOやEUの真の連帯性について改めて考えさせられることにつながっていくと思います。
例えばドイツは、戦車の供与をめぐって最初は慎重な姿勢を見せ、迷いが見られました。各国にプレッシャーをかけられ、ある意味で被害者であるとも言えると思います。ドイツが今後どういう態度に出るのかが焦点の一つになってくるでしょう。その行きつく先として、NATOやEUがバラバラになっていくこともあり得るとは思います。
池上:この先、この戦争はどうなっていくのか。ウクライナとしてはロシアを国内から追い出すまでは戦争を続ける。一方で、プーチン大統領にしてみれば、ドネツクやルハンスクなどウクライナ4州をロシア領として「併合」した以上、そこから撤退することはできない。米国も、この戦争から抜け出すことは難しい。欧州諸国もロシアへの経済制裁をした結果、天然ガスが入ってこないなどさまざまな経済的打撃を受けている。結局、この戦争に勝者はいない。延々と、みんなが負ける負け戦が続く、そんな未来が来るのではないでしょうか。
(構成/編集部・小長光哲郎、通訳・大野舞)
※AERA 2023年2月27日号
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