●20歳で渡米し免許取得
室屋さんがそんな活動を大切にするのは、「空を自由に飛んでみたい」という夢をこつこつと現実のものにしてきたからだ。エアレースに参戦するパイロットは空軍や民間航空会社出身が多いが、室屋さんは自力でキャリアを積んだ異色組。大学の航空部に所属していた20歳のときに渡米し、自費でライセンスを取得。機体の調達やスポンサー探しに奔走したものの、練習の燃料費が払えないほど追い込まれた時期もあった。曲技飛行の実績を作るため、無償でエアショーを行ったこともある。
今も操縦技術世界一を目指す努力を怠ることはない。エアレースのコースをどう飛ぶか。練習中だけでなく、パソコンでデータを解析しながら、あるいは気象条件やコースをチェックしながら、とことんまで最善の作戦を追求する。
「私にパイロットの才能があるかといえば、ないかもしれません。ただ、長くしつこく続ける能力はある。『ウサギと亀』なら亀タイプなんです」
(ライター・角田奈穂子)
※AERA 2016年6月6日号