この日、盛岡第四高校の安藤里彩(りさ)さん(17)は、合唱曲「夜明けから日暮れまで」を、被災者に向けて心を込めて歌った。

 震災直後から3年間、里彩さんは親の仕事の関係で沿岸部の宮古市で過ごした。地震と津波で壊れた街には、身内を亡くした友達がいた。

 大好きな歌で、被災した人たちを元気づけたい──。そう思い、中学で合唱部に入り、避難所や復興コンサートなどで歌ってきた。

「夜明けから~」は、福島在住の詩人・和合亮一氏が作詞した曲。被災者の鎮魂と再生への祈りを歌いながら「道を行け 野を行け」と、エールを送る。里彩さんは言う。

「聴いてくれた人たちに、前を向いて頑張ろうと、復興への思いを伝えることができました」

 宮古高校音楽部副部長の加藤由布香(ゆうか)さん(17)は、自分が被災したからこそ伝えられるメッセージがあったという。

 自宅は無事だったが、沿岸にあった祖母の家が津波で全壊し、大切な思い出の場所がなくなった。街はまだ、復興の途上だ。

「被災地を元気づけたい。震災で家族を亡くした方に元気になってほしい。そんな思いを込めて歌いました」(由布香さん)

(アエラ編集部)

AERA  2016年4月18日号より抜粋

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