「交際禁止」が話題になるアイドル。規定を破ったとして、損害賠償を命じる判決も出た。だが、プライベートの領域にある「恋愛の自由」まで縛ることはできるのか?
所属するアイドルの少女が「交際禁止」規定を破ったとして、マネジメント会社が損害賠償を求めた訴訟で、昨年9月、少女に約65万円の損害賠償を命じる判決が東京地裁で出た。判決によると、当時15歳だった少女は、グループとしてデビューしたが、その後男性との写真が流出して交際が発覚。会社はグループを解散したという。判決で裁判官は、アイドルビジネスの性質に理解を示し、こう述べた。
「アイドルである以上、ファン獲得には交際禁止の規約は必要で、交際が発覚すればイメージが悪化する」
一方、今年1月にあった同様の訴訟の判決では、「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」という判断が示された。アイドルの交際禁止を巡っては、司法の場でも判断は分かれている。
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は、アイドルという独特のビジネスモデルを否定するものではないとしつつも指摘する。
「芸能事務所とアイドルの契約において、交際禁止規定という制約を課すのはおかしい。恋愛は、憲法13条で尊重される『幸福追求権』です。いかに契約であろうと、憲法で認められた個人の自由を制限する形の交際禁止規定は無効です」
アイドルは清廉性を売り出すことで注目を集め、ファンとの疑似恋愛を育むことも多い。その結果、人気が上昇し、チケットやグッズの売り上げが伸びる。
ただ、そのビジネスの特殊性があるとしても、労働時間以外のプライベートについてまで、会社は介入できるのだろうか。