ラグビー日本代表としてW杯を戦い、日本のみならず世界にその名をとどろかせた五郎丸歩(ごろうまるあゆむ)(29)。インタビューで語られたのは、悔しさと期待される喜び、そして責任感だった。
W杯イングランド大会。ラグビー日本代表は1次リーグ最終戦の米国戦に勝ち、3勝1敗で有終の美を飾った。五郎丸はひとしきり泣いた。4年間にかけた覚悟を感じさせる涙だった。落ち着きを取り戻してから、記者が待つミックスゾーンで口を開いた。
「トゥイッケナムの大観衆の前でプレーしていたら、人生観が変わったでしょうね」
決勝トーナメントに進めないことは、試合の前日に決まっていた。W杯史上初めて、3勝もしながら決勝トーナメントに進めなかった誇り高き敗者。その誇りを代弁するように、本音の悔しさが口をついた。
ラグビーの母国・イングランドにおける聖地「トゥイッケナム」は、8万人を収容する大スタジアムだ。決勝トーナメントに進めていれば、準優勝に輝いた豪州と対戦できていた。
「ベスト8の試合は見ましたよ。『ああ、あそこの地に立っとったらなぁ』みたいな」
福岡訛(なま)りが少し残る、五郎丸節。実現していれば、日本ラグビー界がさらに大きな転換点を迎えたかもしれない。
「その思いは今も残ってますね。僕だけの人生観じゃなくて、日本の2500万人もの方がテレビでW杯を見ていた。日本全体の価値観も変わったでしょうし、あそこに一歩届かなかったのは悔しい。日本としても非常に悔いの残ることだと思う」