11月13日金曜日の夜。週末のパリにカラシニコフの連続音が弾け、巨大な爆発音がサッカー競技場に響いた。約20分で死者129人。世界は新しい「テロの時代」に入った。
『イスラム国』の著者でイタリア人ジャーナリスト、ロレッタ・ナポリオーニ氏は、朝日新聞のインタビューで、「ISはフェイスブックやユーチューブをフルに活用する最初の過激派組織。残酷な映像を見せられれば、彼らを絶対的で大きな存在と感じてしまう。私たちはISの幻想を解体する作業を始めなければならない」と語っている。
さらに、「空爆をはじめとする軍事介入は無効だ」と言い切り、「IS支配地域で支持に回った部族勢力などとひそかに関係を築くことで、(ISの)封じ込めに近づくことができる」と語っている。
ISがユーチューブで流している動画の中に、イラクやシリアの部族長を集め、忠誠を誓わせる会合のシーンがある。空爆を続ければ、地域の部族も欧米への怒りを募らせることになる。戦争ではなく、政治的、経済的、社会的な働きかけで、ISから部族や民衆をひきはがしていくことが必要だ。
ISと相対するには、テロの実態を冷静に見る必要がある。パリでは7人の実行犯が死んだが、うち6人は自爆し、1人は自爆する前に警官に撃たれた。パリのテロの前日にはベイルートのシーア派地区でも連続自爆テロがあり、43人が亡くなっている。ISは、「ヒズボラの拠点を標的にした」と犯行声明を出した。
ベイルートとパリのテロの違いは、ベイルートの実行犯は自爆だけだったが、パリは一人の実行犯が銃撃も自爆もする複合型だったことだ。これは中東では珍しく、新しいテロの形なのかもしれない。