「JSCの体質は簡単に変わるとは思えません。世間ばかりか監督官庁さえなめている変な組織です」
長年、独法の評価にかかわってきた委員の一人は話す。巨額の工費が批判されて計画の見直しに追い込まれた新国立の問題は、まさにそんな組織の実態が丸出しになったと言うのだ。
役所の外郭団体なら監督官庁に気を使う。運営に必要な予算を役所が握っているからだ。JSCにも運営交付金として文科省から予算は来ているが、
「JSCは文科省を見ていない。自前の財源を持つからでしょう」(文科省OB)
それが、「toto」の愛称で売られているサッカーくじだ。14年度の売り上げが1107億円に達する。「toto」の語源はイタリア語のトトカルチョ。試合結果を予想し、勝敗や得点を当てる賭博のことだ。totoも01年には、買う人が予想するやり方で始まった。当初は珍しさも手伝って642億円の売り上げがあったが、徐々に先細って06年度には134億円まで落ちた。
それが07年度、637億円と息を吹き返す。理由は、前年に発売されたBIGだった。BIGは、コンピューターが試合結果を自動で予想し、それが当たれば当せん金がもらえる。事実上「宝くじ」と同じしくみだ。サッカーの素人でも簡単に、当時国内最高額だった1等最高6億円の夢を買えるとあって、その6年後には売り上げが1千億円の大台を超えた。
入ったカネはどうなるのか。totoの収益の3分の2は、スポーツ向けの助成金として競技団体や自治体に配分される。助成には条件や審査があるが、JSCの裁量は大きい。こうしてJSCは、独自の収益源を持つ「ミニ財務省」のような存在になった。
そのJSCを「指導」するのが、スポーツ議員連盟(麻生太郎会長)。政治家にとって、地域に根ざすスポーツ団体は大事な選挙基盤だ。自民党文教族を中核に、超党派から約200人の国会議員が名を連ねる。
toto導入に対し、教育関係者らから「スポーツを賭け事の対象にするな」という反対が上がったときも、議連は「草の根の地域スポーツや貧乏な競技団体を応援するためにも財源は必要」という理屈で法案を通す原動力になった。
※AERA 2015年11月9日号より抜粋