●ボールは上級生が先
顧問たちはその方法で上達したのかもしれないが、目の前の子どもは資質も時代背景も違う。12年12月に大阪の市立高校でバスケットボール部の主将が顧問の暴力を苦に自殺した事件の発覚以来、スポーツ・教育界をあげて暴力根絶を推進してきたが、道半ばに映る。
「体罰ギリギリのところで、理不尽な罰を与えるのが指導なのか」(前出の女性)といった声は、どの競技の現場からも聞こえてくる。安全面が考慮されず、理不尽なことを強いられる“ブラック部活”は少なくない。
関東地方にある私立高校バスケ部に所属する娘(1年)をもつ40代の会社員女性は言う。
「暴力はないみたいだけど、理不尽なきまりや習慣が残ったままでショックを受けた」
1年生は2年生以上が体育館に現れるまでボールにさわれない「きまり」があるため、娘は自主練習もできない。4回もあった夏合宿中は、3食どんぶり飯2杯がノルマのため、泣きながら押し込んだ後、口のなかに指を突っ込んで吐いてから練習した。
「バカみたいに食べて、吐いて、練習するの繰り返しです。バスケだけやっていればいいみたいな。実情を知っていれば入学させなかったのに」
一方、首都圏にある私立高校の野球部に息子が所属する40代のパート女性は、「今の顧問は野球を楽しもうというゆるい空気」だという。その野球部は、数年前に前の顧問が暴力問題で退任した。
「ほかに選択肢がなかったのも事実。他校の野球部はブラックな噂が多かった」
他校に入学したシニアリーグの先輩は、凄まじいいじめに遭っていた。ごみ焼却場で制服を焼かれ、携帯電話は部室で2度なくなったと聞いた。