憲法を初めて学ぶのは、小学校6年生の社会科。いかに学ぶかは、子どもたちの「憲法観」に大きな影響を与える。教師たちの授業に漂うのは、そんな緊張感。学びの場を取材した。
クラスのみんなが話しやすいよう、コの字形に並べられた机。担任教師の藤田康郎(53)が教室の中心に立って憲法9条を読み上げる。東京都世田谷区にある和光小学校5年1組で急遽、憲法をテーマにした授業が行われていた。きっかけは前日、男子児童が家庭学習ノートに憲法9条を書き写してきたことだ。
「どうしてこれをノートに写そうと思ったの?」
先生の問いかけに、男子児童が、はにかむ。
「テレビでよく話してるから、ちょっと知りたくなったの」
少し前までは政治なんて全く興味がなかったが、クラスメート5人が8月30日の国会前デモに参加したと聞いて興味がわいた。母は一緒にiPadで憲法の条文を検索しながら、首相の安倍晋三が憲法を変えようとしていること、そうなると兵隊として戦争に行かなければならないかもしれないことなどを話した。
小学校で憲法を学ぶのは、本来は6年生の社会科。5年生の裕太にとって、条文の意味は「なんとなくわかる」くらいだ。
「憲法9条で戦争はしないと決めたけど、仲良しの国が戦争を始めたら、付き合わないといけなくなるかもしれないんだ」
藤田の言葉に、教室は一気にヒートアップした。