「集団的自衛権でしょ?」
「どうせアメリカ。絶対、嫌だ」
「日本が『嫌だ』って言えるかが問題だね」
「同盟を結んでるだけで、市民は関係ないんでしょ」
議論が一段落したところで、藤田が歌いだした。「ぼくたちはぼくたち自身であることが幸せ」というのは沖縄・アメラジアンスクール校歌。「人は愛されるために生まれてきた」というのは韓国・ミラル・トゥレ小学校で歌われる歌だ。両校とも、平和学習や異文化交流で和光小とつながっている。
「皆は皆であることが幸せ。皆は皆でいい、という意味だよ。この二つの歌と共通するものが、日本にもあるんだ」
そう言いながら藤田が黒板に貼り出したのは、憲法の前文だ。
──われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
意味を解説した後、藤田は子どもたちに改めて問いかけた。
「この三つ、似てませんか?」
憲法は大切な君たちを守ってくれる存在。授業を通して伝えたかったメッセージだ。
(文中敬称略)
※AERA 2015年9月28日号より抜粋