しかし2月、この「時間貧困」が、共働き家庭のワーキングマザーにも当てはまることを実感させる出来事があった。川崎市で、中学1年の男子生徒(13)が殺害された、あの事件だ。

 男子生徒の母はシングルマザー。息子が素行のよくない少年たちとつきあい始め、不登校になり、遺体で発見されるという事態に直面して、こうコメントしていた。

「息子が学校に行くよりも前に私が出勤しなければならず、また、遅い時間に帰宅するので、息子が日中、何をしているのか十分に把握することができていませんでした」

 いま子どもを保育園や学童に預けて働く母親の誰が、子どもが中学生になったとき、自分は男子生徒の母親と同様の状態に陥らないと断言できるだろうか。

 印刷会社で契約社員として働く女性(45)も、家事や長女(13)のケアのほとんどを一人で担う。仕事を終えて自宅近くのスーパーに立ち寄ると、同じく仕事帰りのママ友に会うことがある。互いのかごの中には、タイムセールで3割引きになったお弁当やお総菜……。

「みんな、料理をする時間がないんですね。お金を稼ぐことで暮らしが貧しくなっている。矛盾していますよね」

 自分が働かなければ家族の生活が困窮してしまうシングルマザーの「時間貧困」と、夫のいるワーキングマザーのそれを同一視することには、批判もあるだろう。しかし、フルタイムで働こうとすると長時間労働を受け入れざるを得ず、そのうえ、働いていようといまいと「家庭責任」の多くを女性が負うことが当たり前の日本で、24時間を主体的にコントロールできない「時間貧困」は働く母に共通の問題だ。

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