・いまだにひな祭りにおひなさま、端午の節句には兜を飾る。


・ワンピースを着ると「毛糸のパンツをはきなさい」と言う。
・「風邪をひくから」「寒くないのか」と厚着をさせたがる。
・大人っぽい服装や髪形にすると「似合わない」と言う。
・たばこを吸っていると「子どものくせに」と言う。
・実家に帰ると、部活真っ盛りの高校生の頃と同じ量の食事が出てくる。あるいは、うまい棒(小学生の頃に好きだったおやつ)が用意してある。
・実家から帰るときは、大量の食材を持たされる(インスタントのスープなど)。
・残業して帰ると寝ないで待っている。もしくは居間で寝ている。帰ったのを確認すると寝室へ移動する。
・高齢の父が雪道を歩いて駅まで送る(帰りのほうが心配)。

 これらの“心配”や“世話”の対象が幼い孫であれば、祖父母と孫のほほ笑ましいエピソードだ。でもそうではなく、子どもはすでにいい年した「おっさん、おばはん」である。 

 独身者は増加する一方だ。2010年の生涯未婚率(50歳時の未婚率)は男性20.1%、女性10.6%であり、20年前の5%前後から右肩上がりになっている(国立社会保障・人口問題研究所による)。

●関係性を再構築

 発達心理学が専門で大同大学准教授の松岡陽子さんは、「中期親子関係」に注目し研究している。親子関係における「中期」とは、ケアという機能を軸においてみたときの、「前期」(子の養育)が終わり、「後期」(親の介護)が始まるまでの移行期のことだ。

「中期親子関係は、親子が対等な成人同士として選択的に多様な関係性を再構築する時期ととらえられています。就職結婚、親になること、親の定年退職、病気などさまざまなライフイベントを通して親子が関係性を見直していく時期ですが、独身の場合、その関係性が変わるきっかけが少ないと言えます」

 中期親子関係が本格的に注目され始めたのは、2000年前後で、パラサイト・シングルなどが話題に上った頃だという。昔に比べ、長寿化により親は若々しいまま年を取っていき、少子化で子どもはあっという間に成人し独立する。つまりこの「中期」と呼ばれる期間が延び、親も子も自立した生活を維持しながら、何十年も生きていかなければならない。

●ライフイベントを仮想

 関係性の再構築にはさまざまな形があり、それぞれの葛藤がある。

 ある30代の独身女性は最近、両親のことを「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ぶようになった。繰り返すが、独身である。自分に子どもがいるわけではなく、きょうだいにも子どもはいない。

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