1勝もできずに1次リーグ敗退で終わった、日本のW杯。元週刊サッカーマガジン編集長の北條聡氏は、今回の結果で痛感させられたことがあるという。
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世界との差を痛感させられたのは、「走力」といっても過言ではありません。走る量だけでなく質。今大会で好調な中南米チームは、とにかくボランチの選手が走り続ける。気づけばボランチの選手がゴール前まで飛び出して、アシストを決めるシーンも見られました。
日本が走力、運動量を重視したのは、オシム監督の時代です。1対1で勝てなくても、走力で補う戦術を徹底させた。ところが、ザッケローニ監督になり、自ら走ることを意識した長友佑都や岡崎慎司といった選手もいますが、全体として走力を重視していたかは疑問です。
ボランチの長谷部誠や遠藤保仁が第1戦、第2戦で90分間戦えなかったのは、コンディション面もさることながら、走力の問題だったと思われます。山口蛍も起用しましたが、走り続けたのは自陣ばかり。一方、強国は敵陣で走りまくる。日本はそれができず、1対1で不安だからと、1対2、1対3と保険をかけた。これでは攻撃への転換がスムーズにできず、消極的にならざるを得ません。
それと、今大会で疑問符がつく点が、もう一つ。相手チームの分析がどれだけ徹底されていたかという点です。コートジボワール戦で日本の生命線でもある左サイドが潰されました。試合後に長友が、敵の戦術に戸惑ったことを明かしていました。
こんな言葉があります。
「俺たちのサッカー至上主義」
自分たちのサッカーを貫くことができれば勝てる、という意味ですが、裏を返せば、自分たちのサッカーができなければ勝てない、とも言えます。今回、自分たちのサッカーができなくなるやいなや、まともに戦えなくなってしまった。1対1で勝負せず、徹底してパス回しにこだわり続けた「俺たちのサッカー」が裏目に出たのです。
※AERA 2014年7月7日号より抜粋