AKB48の握手会で事件が起きた。これで「会いにいけるアイドル」は、遠い存在になるのか。
発端は5月25日、岩手県滝沢市であったAKB48の握手会。川栄李奈さん、入山杏奈さんと男性スタッフの一人が、青森県十和田市の無職、梅田悟容疑者(24)に、折りたたみ式のノコギリで切りつけられた。
朝日新聞によると、殺人未遂の疑いで逮捕された梅田容疑者は、岩手県警の調べに「人を殺そうと思った。誰でもよかった」「AKB48のメンバーなら誰でもよかった。被害者の名前は知らなかった」と供述しているという。この言葉をそのまま解釈するならば、この容疑者は「通り魔」であり、ファンではないのだが、この凶行がアイドルとファンの関係に深い溝をつくろうとしているのだ。
「会いにいけるアイドル」というコンセプトで活動してきたAKB48にとって、握手会はそのシンボル的なイベントだ。つねに数千人から数万人単位のファンがつめかけ、岩手の握手会にも約5千人が参加していた。幾度となく握手会に参加してきた40代の会社員は、「おとなしく列も守るし、ケンカは見たことがない」と話すが、一方で事件を知ったときには「ついに起きたか」とも感じた。握手会の規模が大きくなるほど、いろんな人が参加し、なかには迷惑行為に走るファンもいるからだ。
「握手会には、セキュリティー改善の積み重ねがあった」と話すのは、『前田敦子はキリストを超えた:〈宗教〉としてのAKB48』の著者で、情報環境研究者の濱野智史さんだ。
握手会には、ファンがメンバーの手を長く握り続けないように警備する「はがし」と呼ばれるスタッフがいる。運営サイドは心ないファンからアイドルを守るため、この配置を改良してきたという。岩手の握手会でも、スタッフたちが容疑者を取り押さえたが、今回の事件を受けて濱野さんは、金属探知機の導入など、セキュリティーの強化も「やむを得ない」と考えている。
「握手券が付いているCDの値段が数百円高くなっても、女の子が守られるのならいい」
※AERA 2014年6月9日号より抜粋