怒りや恐怖、喜びなどで鼓動が高まり、血圧が上がるなど身体反応が起こる。闘争や逃走などの準備のために、進化の過程で動物が行ってきた反応だ(撮影/写真部・外山俊樹)
怒りや恐怖、喜びなどで鼓動が高まり、血圧が上がるなど身体反応が起こる。闘争や逃走などの準備のために、進化の過程で動物が行ってきた反応だ(撮影/写真部・外山俊樹)
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 人間関係の中で生まれる、怒りや悲しみなどの感情。進化の観点で考えると、怒り、悲しみ、妬みなど負の感情も淘汰されずに残っているということは、生物が生き残るうえで何らかの役に立っているのだろう。

 恐怖と不安は、危険信号の働きがある。動きを止め、敵から見つかりにくくしたり、逃げたり、逆に攻撃に出たりして身を守る行動につなげられる。

 害になりそうな食べ物に嫌悪感を覚えて避けたり、病気の原因になりそうなものを不快に思って避ける行動も防衛につながると考えられている。

「うつ」の感情にも、適応的な意味があるという見方もある。母親が出産後に沈み込むと、父親が子育てにかかわるようになる。悲しみをみせると敵は一時的に攻撃をゆるめる。仲間の同情を集め、助けてもらう効果もある。

 うつ状態になり、積極的な行動をとらないことは、それ以上リスクを増やす行動をやめ、身体を休めて再びやる気が出るまで回復を待つ状態ととらえることもできる。

 また、怒りをぶつけて相手の行動を変えることができるかもしれない。威嚇で本当の戦いを避けると、お互いの生き残り確率を高める。

AERA 2014年5月19日号より抜粋