初めて就いた仕事を指す言葉「ファーストキャリア」。そこで自由度の高いベンチャー企業か、組織力のある大企業を選ぶかは、その後の転職や起業を考えると迷うところだ。最近では、M&Aなどを繰り返しながらも成長する姿に「ワクワク感」を感じ、ファーストキャリアにベンチャーを選ぶ学生も少なくない。
一方で、大企業で「ワクワク」を見つける人もいる。現在サンリオで常務取締役を務める鳩山玲人さんは、大学卒業後に三菱商事に入社。在籍中はレコード会社の音楽配信事業や、コンビニでのDVDレンタル事業など、革新的なサービスに次々に携わった。実は、知人が立ち上げたベンチャーがグーグルに億単位で買収されたのを知り、少しだけ迷ったこともある。だが、今では、「もう一度大学4年生に戻っても、また大企業を選ぶ」という。その一因に、現在勤めるサンリオでの経験がある。
三菱商事を退職後、鳩山さんはサンリオのアメリカ法人に誘われ、事業再建を担うことになった。その過程で鳩山さんは、第2の成長を模索する日本の大企業がサンリオ以外にも多くあり、特に創業者が残っている場合はベンチャー並みのスピードで変革が進むことを知った。
サンリオに声をかけられたのも、大企業で立ち回った経験があったからだ。大きな組織を変えるには、決裁の仕組みの知識や社内交渉、そして粘りも必要だ。それを知る鳩山さんの力量が買われたのだという。
「大企業で経験を積んだ人なら、組織の力学を知ったうえで、ダイナミックな変革もできるのではないでしょうか」
鳩山さんのように革新的な働き方を望む人は、ベンチャーに目が向くことが多いかもしれない。大企業のルールだった昇給・昇格システムに自分を乗せるのではなく、ベンチャー企業の裁量の高さを「自由度が高い」と捉えるからだ。しかし、若手の人材育成を行う株式会社ファーストキャリアの若鍋孝司代表は、この姿勢が逆に成長を妨げると指摘する。
「全員でひとつのゴールを目指す企業にとって、若手に自由な仕事を任せるのはリスクが高い。ファーストキャリアの段階では、むしろ会社に染まり、与えられた仕事で150点を目指す姿勢が必要です」
もし、やりたい仕事が明確に定まっていないなら、むしろ大企業に入り、様々な仕事を通じて適性を見つける方がオススメだという。
※AERA 2014年3月3日号より抜粋