「あまちゃん」に登場する「袖ヶ浜駅」の舞台となった三陸鉄道北リアス線堀内駅で。左から望月正彦社長、社員の小松翔さん、「あまちゃん」ウェアでアテンダントを務めた玉舘美冴さん、久慈広域観光協議会の貫牛利一さん(撮影/今祥雄)
「あまちゃん」に登場する「袖ヶ浜駅」の舞台となった三陸鉄道北リアス線堀内駅で。左から望月正彦社長、社員の小松翔さん、「あまちゃん」ウェアでアテンダントを務めた玉舘美冴さん、久慈広域観光協議会の貫牛利一さん(撮影/今祥雄)
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 岩手県沿岸部を走る「三陸鉄道」(本社・宮古市)北リアス線堀内(ほりない)駅(普代村)は今年、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」に登場する「袖ケ浜駅」の舞台となったことで一躍有名になった。

 2年半前、三陸鉄道は東日本大震災で、保有する北、南リアス線あわせて5駅、300カ所以上が被災した。沿線の過疎化や、大きな病院や高校が鉄道駅沿いから移転したことが響き、1994年以降は赤字続き。2010年度の乗客数は85万1千人とピーク時の3割程度に落ち込んだところに、震災が起きた。

 三鉄立ち上げ時に県庁職員としてかかわり、県庁幹部を経て10年に社長に転じた望月正彦社長(61)は、宮古駅併設の本社に泊まり込み、真剣に考えた。三鉄は残すべきなのか、いっそ廃止すべきなのか──。

「地域を衰退させないためにも、鉄道の優位性がある限りは鉄道を残すべきだと思ったんです」

 車に比べて安全で、時間通りに大量の人を運べる。三陸鉄道は比較的新しい路線で最高速度90キロで運行できるため、スピード面も申し分ない。それ以上に、鉄道は町の復興のシンボルとなっていた。

「田野畑、白井海岸、普代…地域の方々が復旧の見込みがまだない段階で駅をきれいに掃除してくれていたんです」

 震災から5日後に北リアス線の一部区間を再開させ無料運転を実施。復旧のたび駅に人が鈴なりになり手を振ってくれた光景は、「あまちゃん」の震災後のシーンでも再現され、鉄道の持つ力を再認識させた。

AERA 2013年11月4日号より抜粋