働く女性にとって大きな悩みのひとつとなっているのが、結婚・出産と仕事とのバランスだ。特に出産や子育ては人生の中でも大きなものであるため、キャリアとの両立は困難なことが多い。中には、キャリアを重視して2人目の出産をあきらめるという女性もいるようだ。

 ソフトメーカーのプロデューサーとして働く女性(43)は、不妊治療も経験し、40歳で長男(3)を出産した。妊娠初期に切迫流産になりかけるほど大変だったが、もっと若い時に産むという選択はできなかったという。

 20代は、ワーカホリックを自任するほど仕事にのめり込んだ。

 社内のメーン部門の担当で女性は自分だけ。プレッシャーもあったが、自分が仕掛けたモノが世の中に受け入れられる喜びは何ものにも代え難かった。

 30代前半で結婚すると、メーン担当を外された。上司が彼女の出産を警戒したからだ。

「今まで通り働けます」

 と訴えたが、若い男性が後任に決まった。

 30代半ばには、仕事のストレスで体調も崩した。不本意な人事に悩んだ時は、「文句を言わせないだけの仕事をしたい」という意地で、不妊治療も休止した。

 それほど仕事に打ち込んでも、出産後、ちょうど業界の不況も重なり、早期退職を促された。退職して、事務の資格を取り、子どもを保育園に預けながら働き続けた。単調な仕事環境に自分がおかしくなりそうだった。そんなとき、かつての先輩から声をかけられた。

「ぜひ一緒に仕事をしてほしい。運命だと思って来てくれ」

 その声に応えて転職し、手にしたのがいまのポジションだ。転職の際、声をかけてくれた先輩にはハッキリ言った。

「2人目をつくるつもりはないので、仕事に打ち込みます」

 子どもはもちろんかわいい。

 2人目がほしいと思うこともある。仕事では自分の代わりはいくらでもいることも実感してきた。それでも、仕事で「人に必要とされる」ことは、いま子育てと同様に譲れないものだ。

「その仕事に情熱があればあるほど、無責任なことはできないし、半端なやり方では自分が納得できないんです」

AERA 2012年11月19日号