東京五輪が開かれる2020年、平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチの連載「金メダルへのコーチング」が『週刊朝日』で始まります。指導した北島康介選手、萩野公介選手が計五つの五輪金メダルを獲得しています。第1回は特別版。これまでの五輪を振り返り、五輪イヤーにかける思いをお伝えします。
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いよいよ東京オリンピックの年が始まります。連載の第1回は新しい年の抱負を述べたいと思います。
前回の1964年東京大会のときは1歳だったので、五輪を直接肌で感じることはありませんでした。
五輪をきっかけに全国各地にスイミングクラブができて、その一つである東京スイミングセンター(東京都豊島区)に就職して、コーチを始めました。高度成長期の五輪が契機となった健康増進の政策や経済力のアップに後押しされて、今の自分があるという思いがあります。
コーチの集大成という時期に地元に五輪が来ます。日本水泳連盟競泳委員長、競泳日本代表ヘッドコーチという要職も任せられています。万全を期して迎えなければいけない、と気持ちを引き締めています。
コーチの仕事を始めて34年になります。大学卒業はバブル経済期の86年。親の反対を押し切って水泳コーチになって、教えた選手が初めて五輪に出たのは00年シドニー大会。のちに男子平泳ぎで2大会連続2冠を取る北島康介です。
04年アテネ大会以降、北島のほかに個人種目だけでも女子背泳ぎの中村礼子、寺川綾、女子バタフライの星奈津美、男子個人メドレーの萩野公介と、16年リオデジャネイロ大会まで4大会連続で五輪メダリストを育ててきました。
08年北京大会までは自分が教えている選手にメダルを取らせることに集中しました。アテネまでとは練習のやり方を変えて、選手に刺激を与えて成長を促しました。北島は100メートル平泳ぎで史上初めて59秒を破る58秒91の世界新で2連覇を果たし、「なんも言えねえ」という名言を残しました。