20年4月から「配偶者居住権」の制度が新設されると、Aのケースでは妻に生涯自宅に住み続けられる権利を与えつつ、法定相続分の遺産分割でも十分な生活資金が受け取れる手当てをしておくことが可能になる。
これらの対策には高い専門性が求められることもあり、プロの助言や協力が欠かせない。税務相談を行うなら税理士、遺言書を作成するなら弁護士や行政書士といった具合だ。ただ、ひと口に税理士といってもそれぞれに得意分野があり、誰もが相続に精通しているとは限らない。
電話やウェブを通じて無料で税理士紹介を行う税理士ドットコムには、全国で4300人以上の税理士が登録している。「相続分野に力を入れる税理士は年々増加傾向にあるが、それでも現状、全体の1~2割程度」(税理士紹介チームマネージャーの多田芳幸さん)という。
同社では複数の税理士から見積もりを取ったり、ウェブ上で料金を比較検討したりすることもできる。多田さんは「相続税のシミュレーションから相続対策のアドバイスまで行って10万円程度のパッケージメニューを用意している事務所もある」といい、相続に強い税理士にツテがなければ、こうした紹介サービスを利用するのも一法だろう。
具体的な対策が決まったとしても、素人が単独でそれを実行していくのは簡単なことではない。一例が前述の暦年贈与で、贈与のつど、当事者間で贈与契約書を取り交わすなどの手続きが必要になる。こうした作業を面倒と感じるなら、信託銀行が扱う信託商品(商事信託)の活用を検討するといい。
暦年贈与であれば「暦年贈与型信託」という信託商品があり、信託銀行が間に入って毎年、贈与者と受贈者双方の意思を確認したうえで、贈与者の口座から受贈者の口座へとお金を移す手配をしてくれる。
遺言代用機能のある信託商品も用意されており、委託者に万一のことがあったときには正式な相続手続きを経なくとも、あらかじめ指定された受取人に一括または定期的に信託財産を渡すことができる。いずれも管理手数料や、契約時や解約時の事務手数料はかからない。