日韓の対立が両国にとって「百害あって一利なし」であることは、経済産業省の現場や経済界などでは十分に理解されているにもかかわらず、韓国に融和的な態度を取ることが、世論との関係で非常に難しくなっている。その背後には、外部からの工作活動の影響があるのかもしれない。

 さらに、台湾では、政治家に中国側から資金提供が行われていたとされ、豪州でも同様の疑惑が表面化している。

 日本や韓国でも政治家への資金提供が行われている可能性はないのだろうか。もちろん、受け取った政治家は、それが「毒饅頭」であることに気付いていないのかもしれない。過去には、日本の政治家が米CIAから資金提供を受けていたということもあった。

 安倍政権は、そうした教訓も踏まえて慎重に行動しないと、「支持率欲しさに、外国勢力の思うがままに操られる」というとんだ落とし穴にはまる可能性がある。

 いや、もしかすると、もうはまっているのかもしれない。その穴は、もがいてももがいても這い上がれない蟻地獄。

「毒饅頭」とか「蟻地獄」なんて考えすぎだと笑い飛ばしたいところだが……。

週刊朝日  2019年12月13日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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