11月23日、豪州の複数のメディアは、中国のスパイ活動に従事した「王立強」と名乗る男性が、香港や台湾などでの工作活動に関する情報を豪州政府(諜報機関)に提供し、豪州への亡命を希望したと報じた。
王氏は、2014年、中国人民解放軍傘下の上場企業の社員として香港に赴任。民主化運動に対抗するために中国からの留学生などを香港の全ての大学に潜入させ、反体制派に対するバッシングとサイバー攻撃を実施するよう工作した。
王氏は、昨年の台湾統一地方選でも、与党・民主進歩党の候補妨害のため、中国情報機関の「サイバー部隊」設立に協力。ネット上の議論の誘導や野党・中国国民党関係者への資金提供の支援を行うとともに来年の総統選への干渉工作も行った。
最近、中国共産党が、香港の民主化勢力を「暴徒」であると見せかけるための偽装工作を行っていると報じられているが、王氏の証言は、こうした中国側の工作がSNSなどによるネット拡散工作と連動して行われていることを物語る。
ここで特に注目したいのは、王氏が、習近平体制下の中国共産党が「目標達成のために軍事、ビジネス、文化などの分野で『全ての国』に浸透している」と警告したことだ。
「全ての国」には当然、日本や韓国も入るはずだ。
日本では嫌韓意識を、韓国では反日意識を高めることが中国の国益となるということを考えてみよう。
日韓対立により、安全保障面で日米韓同盟にくさびを打つことができる。また、日本の輸出規制強化などで日韓の経済的対立が高まり、サムスンなどと日本企業の協業関係が崩れれば、日韓を追撃する中国企業にとっては大きな利益だ。さらに、韓国で反日感情が高まり、日本が米国との一体化を強調すれば、韓国世論が反米になり、日米より中国に親近感を抱く傾向が高まる。
もちろん、根底には、日本の安倍晋三総理と韓国の文在寅大統領の対立があるのだが、その対立を助長するために、ネット工作などを通じて、日本の世論を嫌韓一色に染め上げれば、安倍政権は韓国に妥協できなくなるだけでなく、支持率を高めるためにさらなる嫌韓の動きを強めるインセンティブを与えられる。韓国も同様だ。