藤巻 私は日本はもっと成長できると思っている。財政出動をしたのに成長できなかったという指摘もあるが、財政出動をしたからだめなのではないか。政府がしゃしゃり出てくると、税金をたくさんとらないといけなくなる。小さな政府で何もしなければ、税金は少なくていい。政府が金もうけをして経済成長するのは難しい。本来は規制をなくし、民間活力を使うべきだ。
財政出動を増やせという議論はいまもあるが、政府が出過ぎた結果がビリ成長で世界最大の財政赤字。国会議員をやっているとわかるが、財政が苦しい時期なのに必要性の低い政策が実行され、政府がどんどん大きくなっている。
米国と日本の大企業を比べると、収益力が大幅に負けている。民間活力を生かして、企業がもうけられるようにすべきだ。
原 最近の民間企業の設備投資は、人員を減らし効率化するための投資が中心。新しい需要を生み出すための積極的な設備投資は極めて少ない。介護や医療、再生エネルギーなどの分野では消費ニーズはあるのに、思い切った投資をする民間企業がなかなか出てこない。そうなると、やっぱり政府の出番が必要な部分もあるし、インフラの更新のように政府がやらなければいけない投資もある。
藤巻 日本は成長分野が少ないと思われているが、海外の需要を取り込めばいい。中国が強くなったのは通貨の人民元が安くなったおかげ。人民元は10分の1ぐらいに価値が下がったので、世界の工場になった。
為替は値段そのものだ。円高はモノに限らずサービス、賃金が値上がりするということ。日本は円高ゆえに全ての分野で競争力を失った。
先進国が成長しなくなったのは、通貨の安い新興国に経済がシフトしたせい。特に日本は先進国の中でも、円を強くしすぎた。
原 足元の為替相場は円安ドル高にふれすぎているのではないか。たくさん外国人観光客が入ってきて爆買いしている。中国人観光客らはドラッグストアで買いまくっている。日本人も円がかなり高かった時期には、海外旅行先でブランドものなどを爆買いしていた。
藤巻 為替のせいで外国人観光客が増えたわけではないだろう。スイスでも、中国や韓国の観光客が増えている。スイスフランが安いから訪れているのではなく、中国が40年間でGDPが220倍になっているから。人口が変わらなければ1人当たりの所得も220倍になったということ。経済成長すれば、通貨の人民元が安くなったとしても海外旅行を楽しめる。いま日本に外国人観光客が来ているのは、国力が落ちて、世界経済におけるプレゼンスが低下しているためだ。
原 日本人としては日本が強い国であってほしいが、先入観なく考えれば、日本の国力はこんなものかなと思う。日本は30年間ぐらい世界第2位の経済大国でビッグパワーを持った国として存在した。そのおかげで勘違いしてしまった。経済的に見ると、この50年くらいは日本の長い歴史のなかでまれに見る恵まれた時期だったんだろう。
藤巻 私は日本は潜在成長力は高くて、これからも成長できると信じている。政策ミスをしたので、もう一度やり直さなければいけない。何を間違えたのかというと一つは為替政策。根本的なミスは円が強すぎたこと。日本はその重要性に気がつかなかったが、中国は気づいている。もう一つは平等論が強くて競争を否定したこと。結果平等では成長しにくい。
原 この10年の国家全体としての日本の成長率は先進国でビリかもしれないが、国民1人あたり成長率をドルベースでみると米国並みだった。生産年齢人口1人あたりGDPでみると、日本はむしろ欧米よりいい。統計をきちんと分析すると、日本経済はそれほどひどくなかった。