他にもかつて手塚治虫や藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫ら、昭和を代表する漫画家が駆け出し時代に住んでいたアパート「トキワ荘」が区内にあったことや、当時、それまでサブカルチャーとして敬遠されがちだったアニメが、コスプレなどを通して世間へ浸透し「お茶の間的」になっていたことも追い風となった。
区は、マンガ・アニメの普及・拡大を中心施策の一つに位置づけ、消滅可能性都市が指摘された年から本格化。毎年、池袋で開催される「池袋ハロウィンコスプレフェス」で、高野之夫区長がコスプレを披露することももはや恒例だ。
「区長のコスプレは広く知られていますが、実は担当者も背中に大きな羽をつけるなどのコスプレでイベントに出ていました(笑)」(同)
楽しげな雰囲気とは裏腹、同課は「庁内きってのハードな部署」だという。
「課員は3人だけ。区内の企業、団体、アニメ関連の関係者など、プロジェクトに関わる方々との意見交換含め、調整の連続。大変ですが、その結果、区全体が『池袋アニメタウン』として魅力を発信してくれるようになりました」(同)
今年、区は文化芸術による発展を目指す「東アジア文化都市」に中国・西安、韓国・仁川と並んで選ばれ、さまざまな文化芸術イベントを実施。今、西武デパート池袋本店やサンシャインシティプリンスホテル、池袋マルイなど、多くの企業が協力し、“アニメの聖地”として「池袋アニメタウン」を盛り上げている。
来年3月にはトキワ荘の再現施設がオープンし、23年にはアニメイト本店が大幅に拡大される。ますますマンガ・アニメの聖地化が進みそうだが、熊谷さんは課題もあると話す。
「ここまでは順調に来ていますが、振り切りすぎてはいけないと考えています。どこまで一般区民の方に理解してもらえるか。いかにバランスを取るかが今後の課題です」(同)
メインカルチャーとサブカルチャーが融合する、世界に類を見ない街を目指す豊島区。道なき道を進んでいく。
(本誌・秦正理)
※週刊朝日オンライン限定記事