そんな問題があって迎えた今年の入試では、日大の志願者数は前年より約1万4千人減の10万1千人と、大幅に減少。安全志向から受験生が併願校を増やすなかで、東洋、駒澤、専修は志願者数が増えたのとは対照的な結果だった。悪質タックル問題の影響は、W合格のデータにも表れたとみられる。

 今後の動向について市村広報部長はこう見る。

「日大の対応を見て、大学の体制に不安を覚えた受験生や保護者もいたのでは。ただ、この状況がこのまま続くとは思えない。日大と東洋が人気を競い合う時代になるでしょう」

 志願者数で日大と明暗を分けた東洋大。他のW合格のデータからも躍進が見てとれる。日東駒専よりも格上とされた大学のグループ「成成明学獨國武」(成蹊、成城、明治学院、獨協、國學院、武蔵)とのW合格のデータを見てみよう。

 東洋・法と獨協・経済のW合格は、67%が東洋に、東洋・経営と獨協・経済では、83%が東洋を選んでいる。表にはないが、成城と東洋で学部全体のW合格を見ると、13%が東洋に、明治学院と東洋の場合には4%が東洋に進学。

「東洋大は改革がうまくいき、今年、志願者数が全国で2位になった。その躍進は本物。これからも伸びていくでしょう」(市村広報部長)

 日大も成蹊、成城、明治学院に対し、10%前後の入学比率になっている。最近では、現状に即した新しい分け方として「成成明東日」(成蹊、成城、明治学院、東洋、日本)というグループも注目されている。

「W合格データから、日東駒専の人気は日東と駒専で分かれたとみられます。日東が上のグループに食い込みつつあるのは間違いない」(同)

■関関同立を近大が猛追 存在感を増す甲南

 関西私大といえば、関関同立がトップグループで産近甲龍(京都産業、近畿、甲南、龍谷)が続くという構図が長らく続いてきた。ただ、関西でも大学間の競争が激しくなっており、その図式に変化が訪れるかもしれない。

 注目大学のW合格のデータをみていこう。まずは、近畿大。かつては産近甲龍の中でもそれほど人気が高かったわけではないが、世界初の完全養殖「近大マグロ」をPRし、全国区に知名度を上げた。今では毎年、多数の志願者を集める。

 龍谷・経営と近畿・経営を比べると71%が近畿を選択。産近甲龍グループでのW合格では、入学比率が同じか近畿が上回っている学部が目立つ。

 関関立とのW合格でも、近畿を選ぶケースもあった。近畿・建築と関西・環境都市工、近畿・農と立命館・生命科学のW合格で近畿を選んでいる合格者がいた。

 近畿・建築は11年に建築学科を再編した学部で、建築を冠した学部は日本初。理系なので学生は男性の割合が多かったが、建築デザインの専攻を設けた結果、今春の女性の入学比率は34%に上った。近畿・農は「近大マグロ」を誕生させた学部で、研究力に定評がある。入学センターの担当者はこう見る。

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