「一般的にシニアの男性が多いと言われるのは、家族が気づくからです。夫、父の収入で食べていれば、倒れられては困るし、万が一飲酒運転で事故を起こせば、社会的な影響もあります。だから、家族が騒ぐんです。時代背景的に専業主婦が多かったシニア女性の場合は、アルコール依存症に陥り家族に指摘されても、『今まで我慢してきたのに、なんで文句を言われないといけないの』と話に乗ってくれないケースがあります」
また、核家族化や夫婦のみの世帯の増加といった社会的変化で、家族間のコミュニケーションが希薄化していることも、女性の依存症が気づかれにくい要因の一つだという。
アルコール依存症患者が好んで飲む酒の種類にも変化が見られる。高齢患者の自宅に訪問することもある前出の斉藤さんは言う。
「昔は4リットルのペットボトルの甲類焼酎やウイスキー、ブランデーなどが多かったのですが、最近はストロング系缶チューハイの缶が床に数えきれないほど転がっていることが多いんです。アルコール度数が9%と高く、価格はお手頃。年金で生活している高齢者からすれば非常に魅力的です」
厚生労働省は「純アルコール20グラム程度」を1日の「節度ある適度な飲酒」の量とする。これはおおよそ500ミリリットルの缶ビール1本分だ。対してストロング系缶チューハイは同量で36グラム。斉藤さんは警鐘を鳴らす。
「依存症患者は酔うことが目的なので、手っ取り早いのかもしれませんが、テキーラでいえばショットで4杯半くらい。ガンガン飲むのは、飲み方としては相当危険です。命を失う飲酒につながることもあります」
当然、自身の老いも意識しなくてはならない。
「高齢になると、身体的機能の衰えに加えて、体内の水分量が減ります。アルコールは水に溶けるので、体の水分の絶対量が減っていると、これまでと同じ量を飲んでも濃度が高くなってしまうんです」(前出の松下さん)
飲み方にも気をつけたい。日ごろから寝酒に利用したり、不安を和らげたりするためなど、目的があって飲酒する人は要注意だ。