「習慣どおりに同じ量を飲んでも、同じように効果が出るわけではありません。アルコールに対する耐性がついてくるためです。耐性がつくと、効果を求めてどうしても量が少しずつ増えていきます。普段から量をセーブすることを心がけてほしいです」(同)
下の「適正飲酒の10カ条」を参考にして、ほどよい飲酒習慣を身につけたい。
それでも、アルコールがやめられないとなれば、やはり認知を見直す必要がある。このとき、
「依存症だと認めるかどうかについては、あまり重要ではありません」
と松下さんは言う。
「お酒の問題がその人の健康や社会生活にどれくらい影響があるか。それを認めてもらうことが大事。診断するのは医者。周囲も依存症を認めさせることに熱心になる必要はありません。責めるのではなく、お酒を減らして元気になってくれたらうれしいとか、ポジティブに話をすると受け入れられやすいです」
また、薬物治療もある。
「飲酒欲求を抑える薬や、嫌悪療法と呼ばれる、お酒を飲むと気分が悪くなるといった反応を起こす抗酒剤があります」
今年3月に国内で初めて、飲酒量低減薬が登場。「断酒」が困難であれば、「減酒」から始めることも選択肢の一つだ。
今、新たに問題になりつつあるのがゲーム障害だ。スマホなどのゲームをしたいという衝動を抑制できず、日常生活に重大な支障が出る状態のことだ。5月に世界保健機関(WHO)が依存症に認定した。ゲーム依存も内包するインターネット依存は若い中高生の患者が多いが、今後はシニアにも広がる可能性があると松下さんは指摘する。
「当院に来るネット依存患者は、学校に行かなくなってしまって引きこもる学生など、8、9割が中高生です。中高年は1、2割ほど。生まれたときからインターネットに接している世代とでは差がありますが、今後デジタル機器に慣れ親しんだ世代が高齢になったとき、依存症患者が幅広い年齢層で現れることも考えられます」