大学入試センター試験に代わってスタートする大学入学共通テストでは、従来のマークシート方式とリスニング方式の2種類で、読む力と聞く力が測定される。さらに、新たな共通テストは英語のコミュニケーション力を向上させるため、話す力と書く力についても測定する。

 そこで活用が決まったのが、入試センターが認定した6団体が実施する7種類の試験。高校3年の4~12月の間に受験したうち、共通IDを記入した最大2回分の結果が、同センターを通して出願大学に送られる。だがそもそも目的も尺度も異なる複数の民間試験を、単一の基準で比較できるのかという疑問は当初から指摘されていた。

 試験結果は「CEFR(セファール)」という英語力の国際指標に当てはめて6段階で評価するというが、それを成績とどう対応させるかは各実施団体それぞれの手法に委ねられ、相互に公正さを担保する仕組みは不透明だった。

「6段階で評価という非常におおまかな段階別評価しかできないものを、センター試験に組み込んで点数化するのは、どう考えても無理がある。他の教科は1点刻みの点数なのに、英語だけにおおまかな基準が入ってくると、それこそ公平性に問題がある。民間試験は、あくまで共通テストとは切り離して、各大学がどう活用するのかを決めるべき。そもそもセンター試験は、1月に試験し、月内に採点するという非常に時間的制約を伴うもの。さらに受験者が自己採点できる正確さも必要で、ここに記述式やスピーキングテストなど、丁寧な採点が必要なものを入れること自体が無理な発想。センター試験は、マークシート形式以外は無理なんです」

 毎年およそ50万人が受験する大学入試センター試験。センター試験に民間試験を組み込むとなれば、試験業者にとっては千載一遇のビジネスチャンスだ。一部報道では、教育再生実行本部の初代本部長を経て、文科相を約3年務めた下村博文氏と民間試験業者との癒着が報じられたほか、国会でも民間試験導入の決定経緯の不透明さが追及され、議事録を出すよう要求されている。

「下村さんは国家主義的な道徳教育を導入したりと功罪はあるが、教育の機会均等の努力はした。私が局長のときに、下村さんのもとで高校生のための奨学給付金制度を作ったりと、自身が苦学した経験から、思いも強かった。それに対し、萩生田さんの『身の丈』発言は、憲法と教育基本法に真っ向から反する。経済的格差に甘んじろと言わんばかりの発言で、教育の機会均等という最も大事な理念を理解していない。そんな人に大臣の資格はない」

 第2次安倍政権初期に官邸主導の教育再生実行会議が提言した看板政策だった入試改革の頓挫の責任を政権、文科省がたらい回しにする。その構図は被害を被った高校生の目に、どう映っているだろうか。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年11月22日号

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