財務省が官邸に知らせていなくても、また、経産省が蚊帳の外に置かれていても、検察・法務省経由で官邸はかなり早い段階で事態を把握していた可能性が高い。
それから今日まで約1年半。官邸は当然、内部告発者の出現も含め、あらゆる事態を想定して対策を練ってきただろう。
情報公開請求をしても、税務調査の資料は不開示だ。さらに、政治家の名前が出ている資料は、立件されないからという理由で、既に不要文書として「適切に処理」(すなわち廃棄。ただし、実際には開示対象にならない個人文書として保存)されている可能性も高い。
実は、国税の調査が表面化する18年2月前後、金沢国税局長が辞職を申し出て、国税庁長官官房付に異動。3月には辞職したそうだ。税務申告の繁忙期の辞職とは極めて異例なことに見えるが、本件に手を付けた責任を取らされたと考えれば、腑に落ちる。
関電の発表後の菅原経産相や菅義偉官房長官の極めて素早い対応も異例だ。間髪を入れずに関電を強く批判し、他電力などにも調査を指示した素早さは、官僚だった私から見ても驚きだった。かねて準備していたとしか考えられない。
守りに入った安倍政権を突き崩すのは難しい。米国トランプ大統領のウクライナ疑惑のように、第二のホイッスルブロワー(内部告発者)の登場を待つしかないのかもしれない。
週刊朝日2019年10月25日号