関西電力の不正疑惑が拡大している。野党支持層には、臨時国会で徹底追及すれば、関電幹部だけでなく、稲田朋美元防衛相や世耕弘成前経産相など安倍首相の側近議員にも疑惑が広がるのではと期待する向きもある。これにより安倍政権を追いつめられるのでは、というのだが、今週は、これとは逆に、政治家ルートはほぼ完全に封印されたという、やや大胆な私の推論を紹介したい。
本件は、金沢国税局による税務調査から始まった。2018年1月から2月頃までには、調査対象が関電側にも広がった。菅原一秀経産相は、今回事件が公表されるまで、関電を所管する経産省は何も知らなかったと述べているが、だからと言って、官邸も知らなかったということではない。
関電側に金品を提供した森山栄治元福井県高浜町助役から国税局が押収したメモの中に政治家の名前が入っていたのは確実だろう。その情報はおそらく昨年2月前後には、佐川宣寿国税庁長官(当時)まで上がった可能性が高い。18年2月前後といえば、朝日新聞が森友事件の公文書改ざんをスクープした時期に重なる。当時、佐川氏は、刑事訴追を避けるために必死になっていた。佐川氏から見れば、よりによってこの時期に、政治家が絡む原発マネーの案件に手を付けるなどあり得ない話だ。政治家に波及しないようにとの厳命を下したと考えるべきだろう。
一方で、とんでもないアンタッチャブル案件に手を付けた金沢国税局長は、森山元助役の調査に入る時点で、当然立件を視野に入れていたはずだ。
そうでなければ調査を拡大する意味がない。森山氏の極秘メモの入手後、関電に調査を広げる前に、大まかな方針を立てる前提として、検察当局に相談したはずである(現に、検察は立件を断ったという報道もある)。
しかし、検察は完全に安倍政権のポチに成り下がっているのは周知の事実。おそらく、すぐに官邸に「国税がばかなことをやりました。何とか政治家には広がらないように抑えていますが」とご注進に及んだはずだ。