西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、リーグ連覇を達成した西武の価値を分析する。
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プロ野球は、セ・リーグでは巨人が5年ぶりの優勝、パ・リーグでは西武がリーグ連覇を果たした。西武のリーグ連覇は私が西武監督をしていた1997、98年以来だという。80年代から90年代にかけて何度も優勝を経験していた時と比べ、えらく時間がかかったと感じるが、今の時代はそれだけ連覇は難しくなったということ。厳しい戦いを勝った両チームに拍手を送りたい。
FA、ポスティングシステムといった移籍制度が確立し、主力で生え抜きが長く球団に在籍しない。クリーンアップが10年も同じ顔ぶれ……なんてことは、もはやないだろう。だからこそ、西武の連覇は価値がある。エースの菊池雄星がマリナーズにポスティング移籍、昨年打点王で主将だった浅村栄斗が楽天にFA移籍、捕手の炭谷銀仁朗も巨人にFAで移った。投打と守備の中心が抜けたら、本来なら一気に戦力ダウンするはず。そこを全員の力で埋めたのだから恐れ入る。
抜けたら補強が必須であるとの概念も覆した。昨年はシーズン直前に榎田大樹をトレードで獲得するなど動いたが、今年はシーズン中の動きはほとんどなかった。若手の力量を見極め、我慢の起用をする。私からすれば、高橋光成や今井達也はもっと成長してほしいと感じるが、どんなに打たれてもチームは使い続けた。そういった我慢も、夏場以降に生きたのではないか。今井やルーキーの松本航は、ソフトバンクとの優勝争いの重圧の中で素晴らしい投球をした。
よく、個を重視するか、チームを大切にするか、と聞かれることがあるが、チーム力の最大化のためにはどちらも欠けてはいけない部分だ。しかも、それを首脳陣が押しつける形の野球ではチームの成長はない。局面、局面で必ずバント……では、相手にとっても意外性を感じないし、選手の積極性を失わせる。辻監督の、選手の特長を見極めたマネジメントも素晴らしかったと感じる。選手も個として高い目標を持ち、どんなに点差が離れても集中力は途切れなかった。