東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
フルスイングで首位打者を狙う西武・森友哉 (c)朝日新聞社
フルスイングで首位打者を狙う西武・森友哉 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、西武がソフトバンクを猛追できた要因を分析する。

【写真】フルスイングで首位打者を狙う西武・森友哉

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 パ・リーグは最後の最後まで優勝の行方がわからない、西武とソフトバンクのマッチレースとなった。6月、7月の両軍の戦いを見ていると、西武が最大8.5ゲーム差をつけられた状態から本当によくここまで接戦になったなと感じる。

 夏以降に急激な追い上げを果たした時には、先発投手、救援投手、もしくは打線といった、パーツのどこかに強烈なストロングポイントが生まれないといけなかった。その点、打線の破壊力は証明されているのだから、後は先発か、救援投手のどちらかがしっかりすれば……といった状況ではあった。先発ではニールの活躍なくして語れない。制球力があるから、試合をしっかりつくることができる。6月20日から9月18日の登板で連勝記録は10に伸びた。菊池雄星がマリナーズに移籍し、今年の開幕投手の多和田も不調で2軍調整。そんな窮地を救った外国人投手の貢献度は計り知れない。

 救援で言えば、守護神の増田、70試合以上登板している平井、そして終盤になって入団2年目の平良が出てきたのは大きい。勝利の方程式とまではいかないけど、この3人につなぐ形をとれれば、負けても仕方がないと割り切れる。先発投手も六回まで抑えればという思いになれる。以前から言ってきたけど、5点くらい軽く打線が取ってくれるのだから、投手は目先の1点を守ろうとしなくていい。

 そして、何よりチームの攻守にバランスをとっているのが森友哉だ。投手から見たら、打者の森に投げる球がない。どんな球に対してもフルスイングできる。あれだけ振って首位打者争いをしているのは頭が下がる。打てる捕手と言っても足が速くないから、4番でなければ、せいぜい5番を打つのが定石といえるが、彼は3番。FAで浅村栄斗が楽天に移籍したが、彼がキッチリ穴を埋めている。

 守備面でも、どれだけ打たれても決してあきらめない。自身がクリーンアップに入っていることへの責任感もあるだろう。5点取られようが、何点取られようが、「次」と気持ちを切り替えていることが伝わる。いくら強い意志を込めてリードしようが、投手がそこに投げきれなければ配球もへったくれもない。もし、彼が一流の投手陣を1年間リードしたら、どんな結果になるのか見たい。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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