テレビ通販市場の推移(小売ベース)  (週刊朝日2019年9月20日号より)
テレビ通販市場の推移(小売ベース)  (週刊朝日2019年9月20日号より)
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テレビショッピングの主要企業  (週刊朝日2019年9月20日号より)
テレビショッピングの主要企業  (週刊朝日2019年9月20日号より)

 ネット通販の台頭とともに過去の遺物になるかと思われたテレビショッピング。ところが、市場規模は緩やかな拡大傾向で、シニア世代の女性の心を掴み、根強い人気をみせている。その理由を探ってみた。

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「羊飼いたちの手がなぜキレイなのか知っていますか。その秘密は、毛を刈り取るときに羊の皮脂腺から出る油分だったんです。そこから、優れた浸透力と保湿力、肌弾力性を保持する化粧品が開発されました」

 ある番組で取り上げていたのは、ルーマニアのアンチエイジング化粧品。社会主義国だったルーマニアで独裁的権力を持っていたチャウシェスク大統領(当時)は、自身の老いが気になり、国家プロジェクトとして老化についての研究を推進していた……この商品がどのように開発されたのか、バックグラウンドを番組では丁寧に紹介した。すると視聴者は素早く反応し、平均して1分間で約70万円を売り上げた。さらに、購買欲をかきたてるようなエピソードが紹介され、視聴者の背中を一押しした。

「世界中からVIP、セレブたちがお忍びで訪れた同国のアンチエイジングスパで愛用されているそうです」

 最終的には、3時間半で1億5千万円を売り上げたという。これは、長くテレビショッピングの番組の現場にたずさわってきたフリーアナウンサーの宮坂珠理さんの体験だ。その番組でも記録的な売り上げだったという。

「商品が持つストーリーの力は大事ですね。1時間の番組になると、話題がもたないと放送することができないのです。消費者は番組を、何かを買いたいという目的があって見ているというよりは、エンターテインメントの延長で見ていますから」(宮坂さん)

 ネット通販が普及した今でも、中高年の女性を中心にファンが多いテレビショッピング。テレビ通販の市場は、調査会社の富士経済が調べた小売りベースで2018年に5500億円程度で、市場規模は緩やかながらも、拡大傾向となっているという。消費者はネット通販など、さまざまなルートで商品を購入できる時代になった。あえてテレビ通販で購入する理由はあるのだろうか。

 魅力の一つは、番組のエンターテインメント性だ。アナウンサーの巧みな話術と臨場感あふれる商品の実演でぐいぐいと視聴者を惹きつける。テレビショッピングの番組作りには大事なことがあると宮坂さんは話す。

「化粧品なら、実際に開発したり、販売する会社の社長さんだったり、その商品に情熱を持った人が番組に出てくること。番組のゲストは当事者が大前提です。プロのアナウンサーが上手に商品の特長を話すだけなら聞き流されてしまい、売れません。視聴者には『この人は使っていない』とわかるんですよ」

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