MGCのコースで、選手たちがポイントに挙げるのが終盤の上り坂。四谷周辺を走る36~41キロは高低差最大30メートルの上り坂が続き、ここが勝敗を大きく左右しそうだ。

 大学時代に箱根駅伝の5区を驚異的なスピードで駆け、「山の神」と呼ばれた今井正人(トヨタ自動車九州)と神野大地(セルソース)は、この上り坂を生かしたい。今井は男子のなかで2番目に年長の35歳。「まだまだやれるところを見せたい」と静かに燃えている。ケニアやエチオピアで合宿を繰り返す神野は「35キロ地点で10番手でも自分にはチャンスがある。終盤の坂でサヨナラ満塁ホームランを打ちたい」と大逆転プランを描く。

 混戦模様の女子は、2時間22分台を2度マークした松田瑞生(ダイハツ)が軸になる。根っからの負けず嫌いで、日本選手権1万メートルで17年から2連覇するなど安定感と勝負強さが光る。鈴木亜由子(日本郵政グループ)は持ちタイムこそ2時間28分32秒で出場選手の中で最も遅いが、実力は折り紙付き。暑さも苦手にしない。

 福士加代子(ワコール)は13年モスクワ世界選手権で銅メダルを獲得するなどキャリアは十分。37歳でのMGC出場は男女通じて最年長で、経験を生かした走りをしたい。ほかにも、初マラソンとなった3月の東京で日本選手トップになった22歳の一山麻緒(ワコール)、23歳にして5度のマラソンを経験する前田穂南(天満屋)、昨年の名古屋ウィメンズで活躍した23歳の関根花観(日本郵政グループ)、スピードが魅力で16年リオデジャネイロ五輪5000メートルに出場した23歳、上原美幸(第一生命グループ)と伸び盛りの若手にも注目だ。

 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは言う。

「ドキドキ、ワクワクで一瞬たりとも目が離せない。みなさんが感動するようなレースをしてくれるんじゃないでしょうか」

 日の丸をかけた大一番。泣いても笑っても、恨みっこなしだ。(文/朝日新聞社スポーツ部・山口裕起)

※週刊朝日 2019年9月20日号

暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう