横山医師は、こうした福井院長の発言は不当な退職勧奨に当たると主張している。6月には、不整脈のカテーテル治療やペースメーカーの植え込みなどの業務から外れるよう、病院側から「業務変更命令」を受けたという。
「私は今でも退職せざるを得ないような言動、パワハラをしたとは思っていません。病院側は私に不整脈治療をするなということですので、今はサポートに専念しています。このままパワハラ医師の汚名を着せられ追放されたのでは、私が担当しているたくさんの患者さんに対して申し訳ない。私は黙っていられません」(横山医師)
横山医師に対しては、臨床工学技士や看護師ら複数のスタッフから、パワハラ告発があったという。
「私をよく思わない上司が、私に不満のある一部のスタッフと協力しているように感じています。私は治療中に大きな声を上げることはあります。それは治療中の、突発的な状況下のことです。患者の命が危険にさらされれば、スタッフへの指示の言葉が荒っぽくなることもありますよ」(同)
横山医師の申告を受けて、病院では5月、福井院長の言動に関する人権委員会が開かれた。専門家をまじえた検討の結果、福井院長の言動はパワハラには該当しないという結論が出た。その後8月には、横山医師がスタッフにしたとされるパワハラに関する人権委員会も開かれた。
「私がパワハラしたとされる13項目を突きつけられました。ほとんどは不整脈のカテーテル治療中、もしくは不整脈治療機器に関連したやりとりについてでした。詳細な答弁書を作成し、すべて否認しました」(同)
横山医師の代理人の松尾慎祐弁護士はこう話す。
「福井院長の対応は順番が逆なんです。横山医師の言動が人権委員会でパワハラと認定されていないのに、院長は退職勧奨をした。1カ月以内に辞職の意思表示をしなければ、人権委員会にかけて懲罰の対象になると、委員会を脅しの材料に使っています」
松尾弁護士は、退職勧奨をしたらこれまで10人近くが6カ月以内に辞めているとの福井院長の発言も、不当だと指摘する。
「そういう言動こそがパワハラではないでしょうか。病院側は人権委員会で、『院長のパワハラはシロ』という結論を早々と出しました。委員会では横山医師から事情を聴かないままシロという結論を出しており、ひどすぎる」(松尾弁護士)