再現実験で発火する電気製品(製品評価技術基盤機構提供)
再現実験で発火する電気製品(製品評価技術基盤機構提供)
再現実験で発火する電気製品(製品評価技術基盤機構提供)
再現実験で発火する電気製品(製品評価技術基盤機構提供)
経年劣化事故件数 (週刊朝日2019年8月2日号より)
経年劣化事故件数 (週刊朝日2019年8月2日号より)

 扇風機や照明器具といった家電製品を何十年も長期に使っていると火災など大事故が起きることもある。異音や動作不良などの予兆を見逃してはいけない。長期使用する傾向が特に著しい高齢者は要注意だ。

【写真】恐怖!劣化した食洗機が炎を上げて燃える様子

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 2011年7月、宮城県のある住宅で、約30年使用していた扇風機から突然出火して住宅を全焼。1人が重度の火傷を負った。消費者庁によると、モーター関係の部品が劣化し、異常発熱してスパークが発生し、周囲のほこりなどに着火したと推定されている。

 扇風機や照明器具などの長期使用によって、火災や死亡、重傷などの重大事故が起きている。07~18年に経年劣化が原因とみられる重大製品事故は、経済産業省のまとめによると、扇風機で112件、照明器具で74件、換気扇で39件に上った。重大事故のうち、扇風機は使用期間が35年以上で全体の4分の3を超えている。照明器具では同15年以上で4分の3近くを占める。換気扇は同15年以上で94%に達している。

 こうした経年劣化した電気製品による事故は、高齢者が巻き込まれやすいことも特徴だ。高齢者は「もったいない」「物を大切にしたい」という意識が強いことや、収入の減少で製品の買い替えが進まないことがその理由と考えられる。

 経産省・産業構造審議会の製品安全小委員会が今年3月に開催した会合で、経産省の大澤活司・製品事故対策室長はこう発言した。

「高齢の方になればなるほど、どうしても消費活動に関心がなくなってきて、物を買い替えなくなる。高齢者世帯に行ってみると、本当に長期使用製品に囲まれて生活をしているという実態が恐らくあるのだと思います。そうしたなかで、やはり経年劣化事故は今後増えてくるのではないか」

 経産省がまとめたデータでは、扇風機や照明器具、エアコン、冷蔵庫などで、高齢になればなるほど長期使用製品による事故にあう確率が高くなってきているとしている。

 経産省が昨秋に40歳以上の男女に実施した調査では、扇風機やテレビなど14製品を15年以上使用している人が、中・壮年(40~69歳)で18.2%だったのに対し、高齢者(70歳以上)で21.0%と高い割合になっている。1カ月の平均世帯収入別に見ると、20年以上たった14製品の使用率は、40万円以上の中・壮年で6.8%に対し、20万円未満の高齢者で10.7%に高まる。回答者のうち、中・壮年では40万円以上が約4割を占めているが、高齢者では20万円未満が約4割と世帯収入の低い人が多いのが特徴だ。

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