八「はー、売れっ子だ」
隠「だが、この水無月花魁には故郷に将来を言い交わした男がいた。水無月はその男に操を立て続けたんだよ」
八「えー!? だって花魁でしょ! 無理でしょう!」
隠「白無垢がな……一晩かけても脱げないんだよ。帯の結び目やら紐やらが固くて、そのうえ十二単衣のように何枚も重ね着してるから、どんな客がかかっても裸にできない。初めは怒って帰る客もいたがそのうちそれが名物になり、色気も相まって『何もせずとも花嫁姿の水無月と一晩過ごせれば本望』という客が押し寄せた。年が明け、自由の身となり故郷に帰った水無月。その男と一緒になり、その折には馴染み客から沢山の祝いが届き、皆に祝福され幸せな花嫁となった。それ以来だよ。日本でも 『六月(水無月)の花嫁は幸せになる』と言われるようになったのは……」
八「……なるほど、じゃ日本の『六月の花嫁』の元祖はその水無月花魁ってことですね? で、今日のソープランドまで続いたということですか?」
隠「そうだね」
八「なるほど、聞いてみなきゃわからねえなあ! またひとつ利口になりましたわ!」
……みたいな作り話をつらつら書いてみた。結局何が言いたいかというと『六月の花嫁』って店名、傑作じゃないですか?
※週刊朝日 2019年6月28日号
ああ、それ私よく知ってます。特集トップへ