私が驚いたのは東医も昭和も、入学金の支払期日が、一般受験生と変わらなかったことだ。期日に入金しなければ入学意思がないとみなされる。せめて全ての結論が出るまで待つべきではないか。何より医学部の入学には一度に数百万円が必要だ。そのためにAさんは学資ローンを組みなおす必要もあった。
記者会見で彼女が話したことが耳に残っている。「合格通知が喉から手が出るほど欲しかった」。だけど、半年以上たって届いた「合格通知」は嬉しくありませんでした、と。「入れてやる」という態度ではなく、真摯な謝罪と事実解明を被害者は求めているのだ。
Aさん自身、訴訟するつもりは最初はなかった。あまりにも不誠実な対応に、事件を風化させず、事実を明らかにし、二度とこのようなことが起きないための対策を取ってほしいという祈るような気持ちで、訴訟を起こす決意をしたのだ。
今年、Aさんは第1志望の大学に入学した。正義感が強く、意志が固い。そんな人にこそ、医師になってほしいと私は思う。
差別をしていたのは、この3校だけではない。このような状況を見過ごしてきた医学部全てに、彼女の声に応える義務があるはずだ。
※週刊朝日 2019年6月21日号