北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
この記事の写真をすべて見る
イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は女性差別が明らかになった医学部入試について。

【この記事のイラストはこちら】

*  *  *

 差別入試を行った東京医大、昭和大、順天堂大の3大学を相手に損害賠償を求め訴訟を起こした女性(Aさん)が記者会見をした。3校から「本来なら18年度受験で合格していた」(順天堂大学は1次で不正を行っている)と通知を受けたのだ。

 去年の8月、「女性一律減点」のニュースにいてもたってもいられない思いで、私はツイッターで当事者に呼びかけた。「弁護士につなぎます。声をあげてほしい」。翌日、Aさんからのメールが届いた。私が最初に出会った当事者だった。

 Aさんは自習室で勉強している時に、事件を知ったという。早朝から夜遅くまで机に向かい続け、学力で合格しても、面接で落とされ諦めた女性たちを知っている。彼女自身、今年で最後にしようと頑張っている最中だった。

「どんなにがんばっても女で生まれたからと、さらには若くないからと、医師になる夢を諦めなければいけないのでしょうか?」

 Aさんからの最初のメールに、そう記されていた。現役生ですら将来を考え声を出せない中で、浪人生のAさんの決意はどれほどのものだったろう。

 その後、「女子はコミュ力が高いから」として女性を1次試験で不合格にした順天や、「(現役生の)将来に加点」と説明した昭和からも、電話で「受かっていました」「受験料を返すので口座教えて」と事務的で一方的な電話がきた。

 聞けば、この2校はほぼ電話のやりとりのみで「終わらせよう」としている。文書で証拠を残したくない、被害者同士をつながらせたくない、情報をメディアに与えないための「策」だろう。現に昭和は第三者委員会の報告書を公開もせず、順天は、不正で1次試験で落とされたのだから今年の2次試験受験の資格を与えてほしいという当然の要求にも応じず、受験料の6万円の返還のみを言ってきた。

次のページ