キックの前に独特のルーティンをした五郎丸歩 (c)朝日新聞社
キックの前に独特のルーティンをした五郎丸歩 (c)朝日新聞社

 2015年のワールドカップ(W杯)イングランド大会で、日本では空前のラグビーフィーバーが起きた。その立役者となったのが、五郎丸歩(33)だった。

 優勝2度の強豪・南アフリカを相手に、ペナルティーゴールを5本成功させるなどして「スポーツ史上最大の番狂わせ」と言われる逆転勝利を演出。ボールを蹴るときの独特のルーティン(決まり事)でも人気を呼んだ。

 あれから4年。今度のW杯は日本が舞台となる。9月に開幕し、20カ国・地域が参加する。

 五郎丸は前回のW杯後、オーストラリアやフランスでプレー。17年からは古巣のヤマハ発動機で活躍し、トップリーグ通算得点記録も更新した。

 しかし、今回のW杯に向けた日本代表候補には選ばれていない。スポーツ紙記者はこう言う。

「本人は、代表になるつもりはもうない。前回のW杯で最後と思っていたみたいです。彼は自分の知名度の高さを理解しているでしょうから、今はW杯に向けてラグビー界を盛り上げていこうとしている」

 五郎丸は4月、W杯を中継するNHKのナビゲーターに就任。同大会の中継番組やスポーツニュースなどに出演するほか、NHKが開催するラグビー教室で講師を務めるなど競技の楽しさを伝える活動に力を入れている。

 年齢的に、現役引退の可能性が気になる。だが、チームの練習にもしっかり参加している。

「練習や試合の合間を縫ってメディア露出などの対応をしていますが、4月から練習を再開し、いつも通りトレーニングに励んでいます」(ヤマハ発動機広報)

 前出のスポーツ紙記者も「本人は純粋にトップリーグでプレーするのが好きでやっているでしょうから、当面は現役を続けるみたいです。プレーするのが嫌であれば、すでにやめているはずです」と言う。

 W杯のチケットの売れ行きは好調だという。大会組織委員会の担当者は「現時点で180万枚売り出し、すでに130万枚は売れている。230を超える国と地域から応募があり、関心の高さがうかがえる」と話す。この人気もまた、メディアに積極的に露出してきた五郎丸の存在が理由の一つであることは間違いない。

 大会まであと約4カ月。今回は「五郎丸節」も楽しみたい。(本誌・田中将介)

週刊朝日  2019年5月17日号