のべ志願者数が増えれば、志願倍率は全体的に高まる。本当の競争率を見るためには、実志願者数を募集人員で割った「実志願倍率」が重要になる。
例えば京都産業大では、のべ志願者数の志願倍率は28.6倍だったが、実志願倍率だと5.7倍となる計算だ。
このように実合格者数は受験生らにとって知りたい情報だが、大学側は長年積極的に公開してこなかった。本誌の昨年の報道をきっかけに公開の流れが強まり、今回のアンケートには47大学が回答した。
前年公開しなかった大学でも、「ほかの大学が公開するのであれば拒否できない」などとして応じたところもあった。
今回非公表としたのは中京大と西南学院大、文教大。今回のランキング対象で非公表だったのは3大学だけだが、ほかの大学でも公表していないところは珍しくない。
非公表のところに限らず、大学側にとって実志願者数は出しにくい情報のようだ。ある私大の入試担当者はこう明かす。
「実志願者数とのべ志願者数を比べられることは、大学側には厳しい。志願者数が本当は少なかったんだと、受け取られる可能性があるためです。多くの大学では前例踏襲や横並びの意識が根強く、新たな情報公開に踏み出しにくいこともあります」
とはいえ、公開の流れを止めることはできない。大学通信の安田常務はこう指摘する。
「のべ志願者数が『量』で示す人気だとすれば、実志願者数は『質』を表す数字。受験生や教育関係者にとって有益な情報であることは間違いない。文部科学省は大学に対して、一般的に積極的な情報公開を求めています。大学側の姿勢が問われています」
これからは、のべ志願者数だけではなく、実志願者数をいかに伸ばすかが、大学経営の課題になってくる。併願に頼らず、一人でも多くの受験生を集めようと、試験制度を見直しPRに力を入れるところも出てきた。実志願者数を積極的にアピールする動きも予想される。大学全体が本質的な競争に向かうことを期待したい。(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)
※週刊朝日 2019年5月3日‐10日合併号