東京都感染症情報センターによると、百日咳(ひゃくにちぜき)の報告数が2018年より増加傾向にあります。報告制度が変わったこと、診断方法がよくなったという影響も考えられますが、より正確な流行状況がわかるようになったことは確かでしょう。主な感染者は小学生の子どもとその親世代です。ワクチンの普及や医療の発達により、重症化の危険性がある赤ちゃんの感染は昔よりも減少しました。しかし、百日咳は大人から赤ちゃんへも感染します。大人の百日咳が増加する現代、生まれてくる大切な命を守るためにできることはなんでしょうか。東京都立小児総合医療センターで感染症科医長を務める堀越裕歩医師にお話を伺いました。
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百日咳は、長引く咳が特徴の感染症です。WHO(世界保健機関)は百日咳の特徴として「2週間ほど続く長い咳」と提唱しています。ワクチン接種前の乳児に感染すると、重症化や死亡の危険性があります。
当院(東京都立小児総合医療センター)での、生後3カ月未満で百日咳になった乳児の死亡率は8.3%です。他の国での死亡率が1.3%であるのに対し約6倍の数です。当院は小児専門の重篤な患者に対応できる三次医療施設のため、地域の病院や大学病院などからも重症例が多く紹介されます。重症が多いということも8.3%という数字に反映されているでしょう。しかし、日本最大の小児専門病院の最先端の治療を施しても死亡率が8.3%というのはなかなか高い数字だと思います。
2018年8月、日本小児科学会は、予防接種スケジュールに小学校に入る前の子どもに百日咳ワクチンの任意接種を追加しました。日本では小学生以降の感染者が多いため、入学前に接種することで感染を減らすのが狙いです。この予防接種は任意のものであるため、自費になってしまいます。しかし、この予防をすることで赤ちゃんへの感染リスクを減らし死亡リスクも回避することが期待されます。