どんな役を演じるにも、それを演じる「私自身」っていう大本が大事だと思っています。役を演じる、そこに自分がいる。恥の譜、楽しくもあり、恐ろしくもある職業です。

――大本の「私自身」、つまり素の長山を知る上で、夫の存在は欠かせない。16歳下の、俳優武正忠明氏と1997年に結婚した。結婚を語るとき、大女優の純粋な一面が顔を出す。

 出会いは三越劇場での舞台の共演でした。石井ふく子先生のプロデュース作品に、劇団俳優座の武正を相手役として選んでくださったのです。

 自分で言うのもなんですが、私のほうが年上で、キャリアもあった。でも私のことをちゃんと理解してくれて。どっちが大人かっていえば、彼のほうが大人です。本当に。私は車の運転もできないし、道も迷うし。

 最初は「結婚」するなんて思ってもいなかった。でも彼と結婚してよかったです。彼と結婚していなかったら、今どうなっていたかなんて想像したこともありません。だって、結婚したんだもの。

 わかんないわよね、男と女なんて。あんまり真剣に考えたこともないですね。一緒にいるのが自然だったんでしょう。支え合ってこれからも歩んでいきたいと思っています。

(聞き手/浅野裕見子)

週刊朝日  2019年3月29日号