

若貴フィーバーに22回もの幕内優勝、理事長選出馬、そして突然の角界引退──。平成を駆け抜けた大横綱の言動は、常に世間の注目を集めてきました。引退後、家族とも離れ、孤高の道を突き進む元貴乃花親方の貴乃花光司さんは今、何を思うのか。作家の林真理子さんが、今だから言える話をうかがいました。
* * *
林:景子夫人と離婚なさるとは思わなかったですよ。
貴乃花:私と結婚したがために、相当イヤなことを見せちゃったので、ちょっと苦労させすぎちゃったなという感じですね。「相撲一家」という感じできて、私が跡を継いじゃったので、相当苦しかったと思うんです。もともと元嫁は、「堪え難きを堪え」というタイプではないんで。
林:そうですか。でも、びっくりしました。ほんとに仲がよさそうなご夫妻だったので。
貴乃花 今も普通なんですけどね。子どものことで電話があったり、今日も朝からメールが2、3本来て。
林:そういうおつき合いはしてるんですね。
貴乃花:いたって普通です。たぶん私の角界からの引退というのが大きかったと思うんです。今まで部屋の女将として生きなきゃいけなかったのを、私が引退したことによって解いてあげたいなと思って。
林:まあ、そうなんですか。
貴乃花:元嫁は今、私より八つ上の54歳ですが、60歳を過ぎてから離婚するのは罪だなと思って。それでパッと出たのが「引退を機に(結婚を)卒業しよう」という言葉だったんです。そこで「まず自分が食べていける道を」ということで、私が親方のときに依頼されていてできなかった講演の仕事を「やってくれ」と言って、いくつかしてもらったんです。
林:これからも支えてもらおうとは思わなかったんですか。
貴乃花:土俵で勝負しすぎてきて、私が守らなきゃいけないというのが強すぎちゃったのかもしれないです。フジテレビのアナウンサー時代とは真逆の人生みたいな感じだったと思うので、キツかったと思うんですよね。本人も言ってました。「私はテレビの業界で仕事をしてきたけど、本当じゃないことがこれだけ出る(報道される)のね」って。
林:そうなんですか……。
貴乃花:離婚する7、8年前にも、「この業界ってこんなに闇があるのに、なんであなたはそうならなかったの?」って言われたことがありました。「やりたくなかったことをやらなかっただけだよ」と言ったんですけど、結婚して23年、たぶんキツかったと思うんです。