西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、マリナーズ・菊池雄星投手のメジャー活躍の課題として、投球フォームと球種に着目する。
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マリナーズに移籍した菊池雄星が米国時間2月25日(日本時間同26日)のレッズ戦でオープン戦に初登板した。2回2失点という結果だが、今は打たれるかどうかは関係ない。私が注目していたのは踏み出す右足の足首とつま先だ。
西武時代の昨年は、右足を上げた際に一度ひざを伸ばしてから踏み出す形にしていた。しかし、ひざを伸ばしたときにつま先が立ってしまっているから、踏み出した接地の部分で弾力性がない。足首がクッションのように使えないと、体重を乗せて、フィニッシュで体を捕手方向に出していくことができない。単純に言えば、右足がつっかえ棒のようになり、突っ立ったまま投げることになる。だが、この試合では走者がおらず、2段モーションでゆったりと足を上げている投球は、つま先が上を向かず、ある程度の余裕があった。
ただ、クイック投球になると、右ひざが伸びてつま先が上を向く。この点をどう解消していくかだろう。日本以上に硬いマウンド。踏み出した足は完全にロックされる。体重を前に乗せていくというよりも、マウンドの傾斜に任せて前に出ていくことになる。投球フォームの試行錯誤が続けば、公式戦に入って対策を立ててきた相手に向かっていくことはできない。相手と対峙(たいじ)する前にマウンドで自身と闘っているようでは、いい結果は生まれていかない。
さらに言えば、日本の公式球よりも滑るとされるメジャー球への対応は短期間で解消されるものでもないし、一つひとつの球種の曲がりや球速も調整していかなければならない。投球フォームという「軸」が一定しなければ、球種ごとの微妙な調整はままならない。
球種に目を移すと、スライダーのキレが物足りなかった。菊池の生命線といえる球種だ。彼のいいときのスライダーは速くて鋭く曲がる。速球と同じ軌道で曲げられるかどうかが、メジャーでの活躍を占うキーボールとなるだろう。